Camera lens. 三角測量式レーザ変位計のスペックル・ノイズによる測定誤差
三角測量の原理を用いて測定対象までの距離を行うレーザ変位計は,対象面の性状や傾きに対してロバストに測定が行えるという大きな長所があり,最近用途が拡大しています.
 
 
一方,三角測量式レーザ変位計には,高周波数の「ノイズ」状の測定誤差が生じる問題点が知られています.その大きさは,測定対象の材質や性状によって異なりますが,図1の例では±20um程度もあります.この誤差は再現性が高く,ランダムな「ノイズ」ではありません.
 
 
最初に,三角測量式レーザ変位計のノイズ状の測定誤差は,レーザ光が相互干渉して反射光に濃淡が生じる「スペックルノイズ」が原因であることを示すモデルを作りました.図2は,CCDセンサを測定対象面と平行に,距離の変化が生じない方向に移動したときの,受光画像を示しています.雲が流れるように見えるのがスペックルノイズで,これを距離の変動と誤認してしまうことが,図1のノイズ状の測定誤差の原因です.
 
 
また,CCDセンサをレーザ光軸に関して対称な位置に2つ設置することで,スペックルノイズが測定値に及ぼす影響をキャンセルし,スキャニング測定時の誤差を低減する方法を考えました.市販の三角測量式レーザ変位計を2つ使った試験を行った他(図3),2次元CCDカメラを用いて,原理的な効果と限界を調べる実験を行いました(図4).
 
 
北川 善智 君(2014年3月卒業)と研究を行いました(2015年3月).
 
 
 
Comparison in measured profiles.
 

図1: 触針式表面粗さ測定機(左図)とレーザー変位計(右図)の測定結果の比較の例.表面粗さが十分小さい鋼のブロックゲージ(Ra 0.01um以下)の断面曲線の比較.レーザ変位計の測定結果(左図)には,短い周期で±20um程度の変動がありますが,これは測定誤差です.右図の青線と緑線は,同じ位置を2回測定を繰り返したときの比較ですが,再現性は高く,ランダムな測定誤差ではありません.

 
Laser speckle noise.
 

図2: レーザのスペックルノイズの例.図4のセットアップを使って,CCDカメラで観察したレーザ光の反射光です.ここでは,レーザ変位計を測定対象面と平行に,距離の変化が生じない方向に移動しています.それに伴い,雲が流れるように見えるのがスペックルノイズで,これを距離の変動と誤認してしまうことが,図1のノイズ状の測定誤差の原因です.

 
 
Experimental setup with two laser displacement sensors.
 

図3: スペックルノイズの影響を低減するために,CCDセンサをレーザ光の両側に2つ設置し,検出された反射光の変位の差を取ることを考えました.工作機械の主軸に2つの市販のレーザ変位計を取り付け,計測実験をしている様子です.

 
 
Experimental setup with two CCD cameras.
 

図4: CCDセンサを2つ用いる方法の効果と限界をより調べるために,2次元CCDセンサを持つカメラを2つ設置した実験の様子です.工作機械の主軸に測定対象を取り付け,テーブル上に2つのカメラをレーザ光に対称に設置しています.