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    言うまでもなく,大型部品を素材から削りだすような加工では,加工領域の全体で十分な剛性と運動精度を持つ,大型の工作機械が必要です.しかし,実際には,大型部品でも,局所的な加工の組み合わせで加工されるケースが少なくありません.例えば,大型の建設機械の部品は,数メートルの大きさがありますが,素材は鋳造で製造され,工作機械では,穴加工やポケット加工を複数の位置で行います.それぞれの穴・ポケットの位置関係(穴間の距離など)の精度が要求されます.     本研究では,可動範囲の小さな工作機械を使って局所的な加工を行い,レール等に沿って加工箇所に移動させる,という「移動式」工作機械を提案します(図1参照).コア技術と言えるのは,移動させたときの工作機械の3次元空間内での位置と向きをリアルタイムで計測し,それを補正する技術です(図2).     工作機械は,剛性や再現性を十分確保できるよう堅固に設計し,調整(「すり合わせ」)で精度を出す,という考え方が,一般的です.本研究は,上述のような限定されたアプリケーションでは,計測と補正を基礎として,低コストな機構であっても,同等の加工精度が実現できることを示すことを目的,と言えます.     工作機械の位置・姿勢の計測には,レーザトラッカを使用します.本研究では,溶接用のロボットを使って,計測と補正法の原理的な有効性を調べるための,初期的な実験を行いました(図3, 4).この溶接用のロボットは,X軸・Y軸によって移動できるようになっていますが,これらの軸は運動精度が悪い軸で,「移動軸」(図1のレール)と考えます.レーザトラッカによる位置測定とリアルタイム補正で,ロボット手先の3次元位置精度を確保します.     湯浅 康平君(2014年3月卒業)と研究を行いました(2015年3月).     >> 関連論文: CE58        
図1: 「移動式」工作機械のコンセプトです.    
図2: a) レーザトラッカで工具端の3次元位置測定を行い,それに基づいてクローズドループ制御を行えば,「移動軸」の精度が悪くても,3次元の位置決め精度が確保できます.b) ロボットによる機械加工への適用も検討しています.    
図3: 実験の対象とした溶接用のロボットです.上部に付けられたX・Y軸で粗位置決めを行い,ロボットで精位置決めを行います.    
図4: 実験では,Faro社のレーザトラッカを使って,ロボット手先に付けた反射鏡の位置測定を行いました.     | |||||