工作機械の空間精度
 
 
 
 
工作機械の空間精度
3次元運動誤差の幾何学モデル・補正・測定
 
広島大学 教授 Ph.D.
茨木 創一 (著)
森北出版株式会社
 
定 価:\3,780
ISBN:978-4-627-62511-2
発行年:2017.04
 
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(森北出版の書籍紹介)
5軸加工機をはじめとした,各種の工作機械に対する精度要求が近年高まっている.空間精度は,従来の精度測定とは異なり,工具の3次元軌跡の直接測定から各軸の運動精度を評価するまったく新しい考え方である.その有用性から新たにISO規格に取り入れられ,対応するJIS規格の制定が進められている.本書は,空間精度の考え方と,各種の多軸加工機の精度評価への適用を,豊富な例を挙げて解説する.著者は,関連規格の制定・改定作業にも携わっており,工作機械にかかわる技術者・研究者にとって貴重な解説書である.

 
本書でどのような内容を解説しているか,一問一答形式で,少しだけ紹介します.
 
Q
工作機械の空間精度とは何ですか? どのような機械で,それを評価した方がよいのですか?
 
A

例えば,下図のような大型の工作機械で,X軸の直進位置決め誤差を測定するとします.工作機械メーカでの精度検査では,通常一ヶ所でしか測定しません.このような大型機で,Y 位置を変えて測定しても,X軸は常に同じ直進位置決め誤差を示すでしょうか?


これまでの経験から,Y位置を変えると,X軸の直進位置決め誤差が変わることは決して珍しくありません.この機械構造では,典型的な原因のひとつは,X軸の向きの誤差(ピッチング)です.

この機械のXY平面での「誤差マップ」を測定した結果を下に示します.このようなマップがあれば,3次元の可動領域全体で,機械の位置決め誤差を3次元で評価できます.このような評価を,空間誤差の評価と呼んでいます.


 
 
Q
X, Y, Z軸の直進位置決め誤差,真直度,姿勢誤差などをひと通り測定できたものとします.空間誤差の補正は,どのように行えばよいですか?
 
A

任意の点 (x,y,z) における補正量を,以下の式で計算します.ファナックの「3次元回転誤差補正」機能を使って空間誤差の補正を行うのであれば,以下の式をそのまま使って補正データを計算できます.

equation: kinematic model

記号の意味は,本書で詳しく説明します.この式は,機械構造によって異なります.そのため,機械構造に応じて,上の式を導出できることが重要です.本書では,座標変換の考え方を使って,この「幾何学モデル」を導出する方法を詳しく解説します.

 
 
Q
レーザートラッカは,どのような原理で,何を測定するのですか?
 
A

レーザトラッカとは,測定対象である反射鏡(レトロレフレクタ)を自動追尾する機構を持ったレーザ干渉計です.下の写真は,ドイツ・Etalon社の「LaserTRACER」です.

 
Etalon LaserTRACER.
 

三辺測量の原理を利用して,マイクロメートルオーダの精度で空間誤差を直接測定する方法が確立されています.以下の最小化問題を解くことで,X, Y, Z軸の直進位置決め誤差,真直度,姿勢誤差などをまとめて求めることができます.

equation: multilateration

このアルゴリズムも,幾何学モデルが密接に関係します.本書で詳しく説明します.

 
 
Q
5軸加工で作った加工物の形状誤差から,誤差の原因を推測するためには,どうすればよいですか? できれば,自動で誤差原因診断がしたい.
 
5-axis machining test.
 

 
A

幾何学モデルを使います.旋回軸の中心軸の倒れや,中心位置のずれがあるとき,工作物に転写される機械の動きは,以下のような式で表せます.

equation: 5-axis kinematic model

記号の意味は,本書で詳しく説明します.この式も,機械構造によって異なります.直進3軸の場合と同じ,座標変換の考え方で5軸機構の幾何学モデルを導出できることを,本書で詳しく解説します.この式を逆に使えば,加工物の形状誤差から,旋回軸の誤差を同定することができます.

 
 
Q
R-test測定とは何ですか? 何が測定できるのですか?
 
A

主軸に取り付けた基準球の,テーブルに対する3次元変位を,3本の接触式変位センサで測定する装置です.

 
R-test.
 

上で示した5軸機構の幾何学モデルを使えば,R-test測定された球の変位から,旋回軸と位置と向きの誤差を計算することができます.これは,以下のような最適化問題に帰着できます.

equation: R-test

本書では,R-test測定の解析法を詳しく解説します.

 
 
 
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